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リサーチャー とは
企業で企画系の仕事をしていると、上司の依頼で調べものをして資料にまとめるという仕事が多いと思います。というよりもむしろ、企画系の業務では課長クラスまではこうしたリサーチャーの仕事がほとんどと言ってもいいくらいかもしれません。部長以上になると、これらの資料作りを采配しつつ、本命の仕事はそれを使って幹部や外部の関係者に報告する、あるいは説得することになっていきます。コンサルティング会社ではリサーチャーを経てコンサルタントになっていくというキャリアステップになっていますが、リサーチャーの役割をこなすことは、どのようなポジションになっても実はとても重要です。たとえ社長であっても。
すべては「依頼」から始まる
リサーチャー に調べ物や資料作りを依頼する人が、クライアント(依頼主)です。依頼の内容は大きく分けて、以下のようなものがあると思います。
リサーチ依頼の種類 | 資料の形式 | リサーチの目的 |
1.幹部への状況報告資料の作成 | 会議資料 | 社内の情報収集と整理 |
2.幹部や他部門への説得資料の作成 | 会議資料 | サービスの企画や業務改善、予算の獲得など |
3.社外でのプレゼンテーション資料作成 | 講演資料、提案資料 | ストーリーの作成(素材探し) |
4.依頼主が事業環境を見直すための資料作成 | ビッグピクチャー | 市場・技術トレンド、競合分析、ビジネスモデル分析、ユースケースの把握など |
1と2はホワイトカラーにとっての日常業務ですが、一部の社員には3や4が依頼される場合があります。
これらの仕事が振られるということは、あなたが依頼主、つまり上司から一定の信頼を得ていることを意味します。3の場合は、上司と一緒に議論して悩みながら、素材を探してストーリーに当てはめていくという作業になるかもしれません。講演内容を一緒に考えることができるだけの能力があると認められていなければ、この仕事が依頼されることはないでしょう。
依頼主に特定の目的があるわけではなくても、事業環境を定点で把握したい、あるいは次の取り組みの検討に向けて最新トレンドを把握したいという場合があります。これを誰に依頼するか。客観的な状況判断力やリサーチ能力が認められた部下にのみ依頼される業務で、その部署の若手エースという場合が大半でしょう。3はシナリオに当てはめる素材探しが中心ですが、4の業務では白紙から自律的にリサーチと分析、ドキュメンテーションを行う必要があります。
ビッグピクチャー 作成のためのリサーチ
本サイトで解説するビジネスリサーチは、そのほとんどがこのビッグピクチャー作成を目的としています。社外リサーチャーとして、有償でリサーチが依頼されるのも、その最終的な目的が2や3であるケースはあるものの、やはり依頼主の事業環境を客観的に調べて分析して、それをまとめた上でインプリケーションを提示するという仕事になるはずです。
ということは、そうです。社外リサーチャーの一番の競争相手は、依頼主の優秀な部下である可能性が高いのです(笑)しかし若手エースは日常業務に忙殺されていますから、外部に依頼する別の理由「時間がない⇒アウトソースする」という要素が加わってきます。
昔から、たとえば明治初期の海外視察などは、やっぱり将来を嘱望される若手が派遣されているんですね。視察、現在でいえば海外出張ですが、その滞在期間に触れる様々な情報をどう捉えるか、それを総括してどう報告するか。これはもう百人百様なのです。
そうすると、依頼主はどういう基準で派遣する人を決めるのか。それはもちろん、自分の目となり耳となってくれそうな人材を探すわけです。つまり同じ情報に触れたときに、自分と同じように判断できそうな人材。
あるいは、その報告書の総括・結論に至る思考プロセスをきちんとドキュメント化できる人材。見て触れて分からない内容だったとしても、依頼主であればここに響く可能性があることを想像することができ、細部をそぎ落とさない緻密さがある人材。
たまたま聞きかじった「某技術Aの導入が主流になりつつある」という情報を、「ほんとうに?」と疑って、客観的ファクトを探す努力を惜しまない人材。
ビッグピクチャーを描くという仕事は、このような仕事ですが、そうはいっても、依頼主にとってアウトソース先にしか過ぎないということも、同時によく認識しておくべきでしょう。
社内リサーチャーの場合、ここから先は行動力、実行力、人望を伴うことによって、より高いランクの役職にステップアップしていくことが自ずと期待されます。社内リサーチャーのみの役割に留まることは、有能であればあるほどなかなか難しい選択です。とはいえ、性格や事情によっては、マネージャーとしてキャリアアップするよりも、専門的にリサーチの道を究めたいという人もいます。この場合、グループ会社のシンクタンクに出向するとか、あるいは転職や独立という方法もあり得ます。私の場合もある事情によって、専門化から独立へという道を選んだわけですが、これについてはいずれ語るときもあるかと思います。
社外 リサーチャー 〜専業としてのリサーチャーになる
リサーチャーをキャリアのステップアップの前段階ではなく、専業として考える場合、コンサルティング会社よりもシンクタンクがよりイメージに近いと思います。プロジェクトの依頼があるたびに新規分野をチームで切り拓くというよりも、ある程度のスコープで専門分野をもって、その分野に精通したブレーンになっていくという仕事です。
私自身は大手通信会社の社員として3年間法人営業をした後で、グループのシンクタンク子会社に出向。そこで8年間、リサーチャーとしてのキャリアを積みました。その後33歳で独立し、現在まる15年を経たところです。
独立 リサーチャー 〜どんなテーマでも請け負えるように
独立リサーチャーとして複数の仕事を請け負っていくには、シンクタンク社員のように自分の専門分野を決めることが難しくなります。要するにある程度どんなテーマでも請け負う気構えと、普段からそのための準備ができていない限り、リサーチの仕事で食べていくのは難しいでしょう。
本サイトでは、こうした独立的な社外リサーチャーの心構えやビジネスリサーチの方法・技術などについて解説していきますが、基本的なところは社内リサーチャー、すなわちあらゆる企画職の人たちにも役立つのではないかと思っています。
だって私自身、独立してから初めて、「ああこの仕事は、上司(依頼主)にとってのスーパー部下になることなんだな」ということに気付いたのです。シンクタンク勤務時代はそこに思いが至りませんでしたが、独立してこれで食べて行くという覚悟ができてようやく、この大事な事実を認識させれたのです。だから・・・
すべては「依頼」から始まる!
このチャンスの貴重さを噛みしめながら、それを受けた場合にどのように仕事を進めていくべきかを考えていきます。